福島県を拠点に発信するブランド【remilla】。コンセプトは、人がもつ自然な曲線美や着る人のひととなりの表現。デザイナーの鈴木伸忠さんが高校時代にはまっていた、スケートボードをする時に着るTシャツが欲しかったことがきっかけとなり、さらにはその当時、一緒にスケートをしていた友達と考えてつけられた【remilla】。シンプルななかに、着心地のよさや生地、デザインへの細かなこだわりが込められたブランドです。そんな【remilla】のデザイナー鈴木さんに、お話を伺ってきました。
●●●
シーズンのアイテムをはじめるときって、どういうところがスタートになっているんですか?
いろいろな角度があるんですけど、未だに作っていてよく分かっていないというのが素直なところです。
どうやって作ればいいんだろう?って毎回探って作るんですけど、服のことなのに、何故か人のことを考えていることが多い気がするんですよね。
「こんな人、あんな人に合うような服」って意味ですか?
ビジュアル的なものというよりはもっと内面的な部分かもしれないです。
服自体、人が触れるものなので、人を感じるという角度が一番しっくりするんだと思うんですよね、今は。
自然の中に生えてる木ってけっこう変わった感じのやつってあるじゃないですか。
それがステキだなぁと。手入れされて剪定(せんてい)された植物を見るよりも、すごく魅力を感じる部分があって…。
置き換えると人みんなそういうことかなぁと。友達や親、兄弟、色んな人の影響を受けてその人が形成されて、その間でもこういうのはやめようとか、こういうことに挑戦してみようとか、自然な流れでその差し引きがあったとして、そんなニュアンスが多分自分にもあるんだなって思うんですよね。
自分も探ってはいるんですけど、はっきりとは言えなくて、”それ”としか言えないんですよ。
その”それ”を探ることなんですけどね。
そういうことと自分の服作りって、なんか似てるなと思うんですよ。
なのでいきなり変えることはできないんですけど、なんかそれが人らしくていいなぁなんて思うところもあるんですよね。
「こんな服をやっていきます」というよりは、「ある人がこういう服を着たら良いかもしれない」みたいなもっと内面から寄せていくような感じですかね?
例えば、あ、これ欲しい!って思うその感覚が、理屈で説明できる部分から無意識で選んでる部分になった時、人がなぜ”着る”という字をもった”愛着”になるのかがすごく気になるんですよ。
それが自分もできたらすごいな〜なんて思っていて、そこの感覚に働きかけられるようなものってどんなのがあるかなっていうのは、いつも悩んでますけどね。
なんというか友達を作るような感覚とちょっと近いですかね。
気を使わなくて良いし、こいつとは色々喋れるし、みたいな感覚で、服もそんな接し方ができたら良いのになと。
着て自分を高める服というよりは、寄り添うような服をもっと作れたりしないかなぁって思うんですよね。
ぼく、【remilla】って、なんとなく好きでずっとクローゼットにあって、10年たっても残っているような服だと思っているんですね。そういう意味では春夏のハング0号。あれはあれでプロトタイプとしてあのままリリースされてますし、実際にハングジャケットとして出されたものと、0号として出されたものの狙いってどういう感じだったんですか?
意外に服って大それたものではないと思うんですよ。
僕もいろいろ世の中を知っているわけではないので、一概には言えないんですけど、プロセスみたいなものにすごく興味があるんです。
簡単に手に入ってしまったものというのは簡単に手離れしてしまうのかなぁみたいな。
苦労して手にしたものは捨てられずにいるみたいな、そんなところにもさっきの”愛着”みたいなのが隠れていて。
生地を1回試すときに、絶対試しづくりをしていて、これまんま0号がそうなんですけど、それでやっているときに今この存在がなんか感じるなぁ、じゃあそれを活かして形にしていく中で、あれ消えてくなぁ?って感じがあるんですよね。
【2017春夏】ハング0号
【2017春夏】ハングジャケット
鈴木さんが言うところの「ラフ打ち」ってやつですよね?
はい、そのラフ打ちのときに出るそういうのって、自分が小さいころから何かを作るときに楽しんでいたその温度を目指しているんですけど、いちばん楽しいのは作っている時に、ノッてるときなのかなって思ったら、それは売れる売れないではなく、一度見てもらうっていうのが良いんじゃないかなぁと思ったのがきっかけですね。
ちょっとどうなんだろうと思ったのは思ったんですけど。笑
例えば、もうちょっとこうしたらかっこよくなるだろうなぁって分かっていても、あえてやらずにリリースしたこともあるんですか?
ありますね。
きっとそのかっこいいを選んでしまったらこの何かが消えてしまうなと思っちゃうことはありますよね。
ただできるだけ…近年はそういう…なんていうんですかねぇ…
きっとこれからも若い人でも服を作ろうとする人は世の中にいっぱいいる。
逆に日本なんてブランドがありすぎるのかもしれないですけど、どこかまだ型にはまってる自分がいるんじゃないかなーと、なんかもっと衝動のようなものがあってもいいと思いますし。
作り込んでみるということをもっとやってみるのもいいと思うんですけど。
ある程度自分たちのできる範囲内で今はまだ探してる最中ですね。
なんかお話を聞いてると、洋服じゃなくてもよかったんじゃないかなぁ?と。笑
たまたま手段が洋服だったのかな?という感じに聞こえます。
僕の友達は誰も僕のことを洋服のデザイナーなんて思ってる人はいないみたいなんで。笑
でも他がわかんないんで…他の人たちはどうやって作ってるんですかね?
なるほど。笑 今年で20年ですか?(取材当時:2017年9月)
そうですね、8月9日で20年を迎えました。
ここ近年で意識が変わってきたこととかってありますか?
ありますね。ぼくもこんなこと言っていても、できたら毎回チャレンジしたいなと思ってはいるんですよ。
今までやっていないことも、今後何かを探っていきたいなという気持ちには改めてなってるような気がしますね。
できる範囲のことをやってるつもりはないですし、それだけで終わらせるつもりもないんですけど、自分の挑戦してみたい作り方がまだまだあるのかなと。
でもあくまで、人が着るものでなければという部分は強く思ってますね。
衣装っぽくなってほしくないですし。
なるほど。ちなみに、洋服のいちファンとして聞くんですけど、カットソー(※1)と布帛もの(※2)とどちらの製作がお好きですか?
※1 カットソー…ニット素材(編物)の生地を裁断、縫製して作られる衣服の総称。
※2 布帛…織機で織られた生地のこと。
布帛ですね、僕は。
カットソーはカットソーの良さがあるんですけど、布帛は好きですね。
僕が布帛に思うのは、ステッチの見え方を変化させられることですね。
あと、作ってあるということを主張できるのが布帛のほうが強いのかなぁという感じはありますね。
【カットソー】ドルマンパネルTEE
【布帛もの】ヒトエラウンドシャツ
なるほど。変化が出しやすいというか、出やすい?
うーん…。
なんかこう、ステッチを剥いで叩いてみたいなこと自体が道みたいになっていて、しわの出方、コシ感とかがさらに臨場感を与えるみたいな感じですね。
なるほど。そして今回、その布帛のスタナースモックを別注させて頂いたんですけれども。
ありがとうございます!
今年(2017年)の春夏でおっ!これはきたぞ!とすごい思って。
案の定すごく人気が出て、やっぱりいいよねっていうことで、今回カラー別注っていうのをさせてもらったんですけど、このスタナースモックについては何か思い入れってありますか?
高校生のときだったと思うんですけど、Tシャツを作りたいと思って、それでナイロンの生地で作っちゃったんですよ。
そしたら穴が伸びないんで、生地がつっぱって頭入んなくって!笑
生地はよく日暮里とかに見に行っていたんですけど、いいカットソーの素材が見つけられなかったんですよね。
で、Tシャツといえば天竺(※)という考えも僕の場合あまりなくって…。
スウェットのように軽く着られるけれど、風を通しにくくて重ね着やルーズ感を出しつつ、でも使い勝手の良いものがスタナースモックの最初だったと思うんですよ。
※天竺…たて糸とよこ糸を平織した織物の一種。Tシャツによく使われる。
先ほど布帛の方が変化がつけやすい、出しやすいとおっしゃっていたんですけど、本来はカットソーの生地で作っても良さそうなものを布帛で作られるんだなぁと毎回思うので、そういうところもあるんですかね?
そうですね。できるだけ子供みたいな目でなれたらいいですよね。
当たり前ではなくて、違った角度からそういうものもあったら良いなぁと。
言われてみたらスタナースモックってスウェットみたいな形ですよね。
スタナーにかぎらず生地選びで気にされてることってありますか?
こんなのあったらいいなっていうゼロからの想像は生地に関してはそこまではできないんですよ。
例えば、自分が今まで触れたり、もしくはこんなのあったらいいなっていうのにちょうど当てはまったりとか、そういう感覚の部分ですかね。
やっぱり人が着るイコール自分も着るものだと思うので、自分の直感的なもので当てはまるのが一番いいかなとは思っていますね。
単純に自分が良いと思ったかどうかっていうのが基準ですね。
「枠にとらわれないように」っていう枠にとらわれているかもしれないです。笑
そんなところは念頭においていますね。
じゃあこのスタナーに関しても同じような?
そうですね、なんかかわいいなと思ったという感じですね。
なるほど。今日はどうもありがとうございました。